2011年08月20日

バーと婆あ

名古屋駅からメトロで二駅ほど離れたオフィス街。一本路地裏に入ると、そこには昔ながらの商店街が軒を連ねる。もっともテナントは居抜きで、近代的なイタリアンや居酒屋なんかに取って代わってしまったところがほとんどだが、その一角に小さなバーがある。

そこのオーナーがそれはもう痛快な人柄で「店の前でタバコでも吸おうもんなら隣の店のクソババアが鬼の首でも取ったかのように怒鳴りつけるんですわ」という悪態をあっけらかんとつく。その衝撃たるや、我々夫婦の胸に響くどころか貫通するような爽快感と香りを残していた。

以来、嫁は「鬼の首」というフレーズをたいそうお気に召した様子で、それからしばらくは事あるごとに「鬼の首、鬼の首」と、まさに鬼の首を取ったかのように吐き散らしていたのであった…しかし、幸せはそう永くは続かない。

エビングハウスの忘却曲線という「繰り返し使わないと忘れてしまう」理論があるが、嫁は辛くもその餌食になった。久々に「鬼の首」を繰り出そうとした瞬間、渾身の呪文を誤って「馬の骨」と唱えてしまったのだ。あまりの不意打ちに、馬でもなく鬼でもない「夫の首」が擡(もた)げそうになった。
posted by おんじ at 00:00| Comment(0) | あちゅpedia | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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